
説明不要の名作ゲームタイトルである『メタルギアソリッド(MGS)』。重厚なストーリー、精緻な演出と、そして「メタルギア REX」が登場したことによってゲーム史だけでなくメカニックデザインの分野でも「その後」を創り出した重要作品として広く知られています。

80年代前半の『スター・ウォーズ』エピソード 5.6で銀河帝国地上軍の主力兵器「AT-ST」によってイメー ジが広く確立された二足歩行兵器ジャンルである「ウォーカー」。面的な構成から放たれる工業製品然とし たザ・量産兵器という佇まい、二足歩行という特性を活かした動きの演出は多くの SF メカニックファンの心を掴み、今に続く「mech(メック)」のルーツのひとつとなりました。その後、舞台は太平洋を越えて日本に移り、ほぼ同時期にホビージャパン誌上で連載されていた横山宏氏による『S.F.3D』においてシュト ラール軍の無人強襲偵察用二足歩行戦車「クレーテ」が登場します。横山氏が「AT-ST」から受け取ったインスピレーションは、面的構成の対極である曲面的な量感を持ったフォルムへと展開し、これが『S.F.3D』〜『Ma.K.』のプラモデルキット化と共に欧米圏へと帰還したことで、「ウォーカー」の存在感はさらに強まっていくのでした。そして、「AT-ST」と「クレーテ」の系譜は、ゲームのメカニックデザインとして87年-90年にMGSの前作である『メタルギア』および『メタルギア2 ソリッドスネーク』へと派生していき ます。ここで「メタルギア REX」へと続く「TX-55 メタルギア」、「メタルギア改D」が誕生しました。 「メタルギア改 D」では、そのフォルムだけでなく『スター・ウォーズ』と『S.F.3D/Ma.K.』を範としたキ ットバッシング/ミキシングビルドによって立体モデルが製作されており、これに横山氏デザインによる「クレーテ」のパーツが多数用いられていたという点からも、特に模型・SF造形ファンからも人気の高い機体です。『スター・ウォーズ』『S.F.3D/Ma.K.』『メタルギア』という展開は、SFメ カニックデザイン・モデル製作における重要な文脈として、今後のより一層の研究と体系化が待たれるところです。
※メタルギア改Dの製作エピソードと立体モデルについては、小島秀夫監督のXでも閲覧することができます。 https://x.com/Kojima_Hideo/status/1492766742787260419

時は流れて1998 年、続編の『メタルギアソリッド』が製作されました。そして、この最後の場面で立ちはだかるのが新川洋司氏デザインによる「メタルギア REX」です。核搭載二足歩行戦車という前作機の設定を引き継ぎつつ、前2作からポリゴン3次元描写へと大きくビジュアルが更新される中で、その 環境において最大限の効果を発揮するよう構想された機体は、メタルギアのデザイン前史となる「AT-ST」、「クレーテ」からのテイストを踏襲しながら、巧みな面の角度や上体を大きく2ブロックに分けたスタイル によって、より立体的な動きを見せる人型以外の大型兵器というイメージを実現、ここに「ウォーカー」の 新世代像が提示されます。そのフォルム、ディテールの密度バランスといった新たなメカニック文法は、 ゲームという媒体を通じて発表されたことで、すぐさま国内外に多大な影響を与えました。「AT-ST」「クレーテ」「メタルギア REX」はメカニックデザインを志す人々にとって、今でも参照される続ける「三大ウォーカー」といっても過言ではありません。
そんな象徴的な機体も、コトブキヤから2012年に1/100スケールでプラモデル化され、奥行きと高低差に富んだフォルムの立体化はゲームファンだけでなくプラモデルファンも唸らせる人気キットとなりました。2016 年には今回の「METAL GEAR SOLID 4Ver.」がリリースされます。
ソリッド・スネーク最後の戦いを描いた『メタルギアソリッド 4』。ストーリーの終盤“あの島”へと再び赴いたスネーク達を待ち構えていたのは、かつての強敵「メタルギア REX」。しかし、そんな巨大二足歩行戦車は、その存在意義であった主兵装のレールガンを奪われ、装甲は脱落し、スネークとの激闘によって受けた 損傷もそのままに放棄されていました。これにスネークが乗り込んでプレイヤーが操作することになろうとは……。そんな劇的な展開に胸を熱くしたファンの方も多かったのではないでしょうか。そんな印象的なモチーフのコトブキヤキットが今回待望の再販となりました。

先代のボックスアートが新川氏イラストとメタリック調だったのに対し、「4 Ver.」は天神英貴氏による臨場感に溢れたものとなっています。塗装仕上げの参考にもしたくなる重厚な筆致が魅力的です。先代キットとの共通パーツに加えて、半壊状態を再現するための新規パーツランナーが多数追加されています。機体各所の半壊状態外装と露出する内部メカは別ユニット化され、さっそく組み立てへの期待が高まりました。


ダメージがモールドされた新規パーツのレドーム側面の外装。劇中でREXのウィークポイントとして設定され、スティンガーミサイルを受けて特に大きくダメージを受けた状態が表現されています。

大きく損傷したレドーム正面も新規パーツに。機体各所と同様にレドームも複数のグレー成型色とすることで、ストレートに組み立てても見所を存分に楽しめます。

頭部ユニットの露出している内部も立体的なパーツの組み合わせです。新規外装と合わせて実際にパネルが外れたように見える設計のこだわりポイント。

新規の外装パーツに成型色の色分けが組み合わさることで、左右脚部それぞれの差異がしっかり出ています。「4 Ver.」では一基だけ残っているディスチャージャーや、爪先のパイルバンカーといったパネル以外の脱落部分も基部などが新規パーツ/モールドに。

大型のレールガンが外れたことで後部ユニット側面が際立ちますが、ここで目を惹くのがゴールドのワンポイント箇所。こちらは質感に溢れたゴールドの部分塗装パーツとなっており、塗装仕上げ、ストレート組み、どちらのユーザーにも配慮されています。

『MGS4』ではプレイヤーが発射することになる背面の垂直発射型ミサイル。ハッチ開閉機構も先代から引き継がれています。

「4Ver.」ということで、付属フィギュアはコックピットに乗り込んだスネーク、雷電、メタルギアMk.IIIとなっています。1/100スケールながら、それぞれのキャラクターの特徴が精巧に造形されており、2人と1機がコックピットに乗りこんだ劇中シーンを立体で見れるのも嬉しいです。

本キットは各部接続軸の可動だけでなく、脚部の伸縮機構によって様々なポージングをすることが可能になっています。『MGS4』劇中ではさらにダイナミックな動きを見せてくれるので、付属の専用ベースも大活躍です。

コトブキヤによって劇中の「半壊状態」としてプラモデル化された「メタルギア REX METAL GEAR SOLID 4 Ver.」の姿からは、ゲーム史に残る革新的タイトルの忘れることができない名シーンの数々と、その世界をより重厚なものとした演出装置、メカニックデザイン史としても重要なマスターピースの一端を垣間見ることができます。
スネークが乗る「REX」と対峙した「メタルギアRAY」も再生産(2026年現在)されているので、シャドー・モセス島で大怪獣バトル! な激闘を繰り広げた2機を揃えてみるのもよいですね。「先代REX」と「4 Ver.」を並べる通な楽しみ方だってできちゃうのです。「REX」も「RAY」もそれぞれ接着剤が無くても組み立てられるので、新川デザインの妙を余す所なく観察できる立体資料としても手に取り易くオススメです。『MGS4』を代表する無人兵器のみんな大好き「月光」などなど、他にもキット化されていない関連機体がまだまだあるので、一連の再販によってコトブキヤさん含め、今後のメタルギアシリーズ展開にも一層期待が高まるのでした。ぜひ皆さんも「4 Ver.」をはじめ、プラモデルだからこそ味わえるメタルギアの迫力を楽しんでください!