

東京・三ノ輪のギャラリーHIROUMIで開催中(2023/10/13-11/5)の『MIXINGSCAPE』は彫刻家/作家である大森記詩氏によるミキシングビルド作品の個展だ。「彫刻家による個展」なんて聞くとアートと対峙する心持ちで見なきゃいけないんじゃないかと身構えてしまうかもしれない。でも安心して欲しい。大森氏は『月刊ホビージャパン』をはじめとした模型専門誌で活躍するプロモデラーでもある「こっち側」の人間でもあるから。「模型誌モデラーの作る模型作品展」という心持ちで見に行って大正解。

プラモデルの展示会を何度か経験しているヒトならまず驚くだろうと思うのはそのサイズ。全てが30センチを優に超え、ガンプラでビックスケールとされる1/60スケールのキットより大きな模型作品なのだ。
作品ごとに設定されたスケールは1/16~1/12スケール。仕上がりもちゃんと「そういうスケールの模型」に見える。四肢のあるロボットの模型といえばガンプラを思い浮かべてしまう人間なので、そういう点でも新鮮な印象を受けた。パーツ選び方から使いかた、粗密の出しかた、同じモデラーとしての視点でとても興味深く見れる。

プラモデルの部品をかき集めて作るのなら自分にもできそう…というとっつきやすさが、自分ならどんなふうに作るだろう?同じ部品を集めたら同じようにできるだろうか?と想いが巡る。自分も上手になったら作品展を開こうと思えるかな?というか、そもそも自分は自分の作ったモノを「作品」と胸をはって言えるだろうか?「『プラモデルは自由』だから何をどんなふうに作っても、未塗装でも素組みでもあなたの素敵な作品ですよ」という考え方だってある。だから僕の作るプラモデルもこの個展の作品も同じだね!……とはならなかったんだな。率直な感想として。

作家として活動する人たちは作っている対象に「作品として立つ」という閾値みたいなものを設定していると感じていて、その閾値を越えて「立つ」ための作業を重ねているのだという理解でいる。閾値に至るための内容自体は作家によって異なるんだろうけど、その「作品として立つ」事に対して作家は責任を負うのだと思う。自分も美術系の学校にいたけれど、適当な制作をしてしまい「作品が立ってないな…」というような気分を何度も味わったのを思い出した。

「作品として立つ」ってスゴイことなんだな。と、とても思う。ミキシングビルドは構成する要素自体が本来意図された立体上では別の意味を持つハズだったプラモデルのパーツなので、そういう意味での「立つ」ために必要な閾値が高めの部類だと思う。それでもこんなに強力に「作品として立つ」のだ。つ、強い……(小並感)。

「個展にあたってのインタビューを読んだら制作する際の思考回路がただただ模型雑誌に感化された少年のそれで嬉しくなってしまった」という話を本人にしたら「ウソでも何でもなくホントにその通りですよ。プラモファンの気持ちそのままで見て欲しい」と最高な返事をくれる。嬉しい。でも「作品を立たせる事の出来る」作家なんだぞ。距離感を間違えたフレンドリーに呑まれたくない、ネクタイ締めて最後までシャキッと見ていくぜ!ノーネクタイだったけど。

……と再び身構えると、芳名帳に誘導される。名前を書いて顔を上げると正面にくる一番奥の壁に設けられた棚には、今回の作品群に共通して使われた「5㎜各プラ棒とアルミ線で作られたフレーム」が展示されていて「みんな知ってる素材でみんなもできる。ホラやってみようぜ。5㎜角プラ棒とアルミ線買って帰ろうぜ!」ってささやきかけてくる。
「僕も5㎜角プラ棒、買って帰るか……」
モデラーである自分と同じようで嬉しい、同じようで全然違う、をいったり来たりしてそんな気分で帰路につく。絶対に同じように作れなくても模型雑誌に書いてある材料揃えたりしたよね。昔。
みんなも、模型誌に感化された少年になってきたらいい。
KISHI OMORI『MIXINGSCAPE』@Gallery HIROUMI
会期:10月13日(金) – 11月5日(日)
11:00 – 17:00(土日祝 – 19:00)
会期中無休/入場無料
前半 10月13日(金) – 10月24日(火)
後半 10月25日(水) – 11月5日(日)
◎会期中に展示構成を変更予定です