プラモ塗料千夜一夜/Xネブラが導いた最上級の革の色

ツヤのある塗料からツヤを消すのは簡単だけど、ツヤ消しの塗料をツヤありにするのは難しい。
この一方通行に気づいた塗料メーカーが、最近ぞくぞくと光沢塗料を送り出している。
かつて半ツヤ・ツヤ消しと相場の決まっていた色たちも、いまガラリとその印象を変えている。
これは輝きはじめたプラモ用塗料たちの物語──。
第一夜はガイアノーツの「ダグラムカラー CB-14 ライトカーキ」である。

▲使用シーンには「ブロックヘッドXネブラ対応型の本体(腕部、腹部、大腿部)の薄い方のカーキ色です」とある。

 ミリタリーカラーを光沢で出すなんて酔狂だと思った。
 今はとても反省している。

 伝統的なタンニンなめしという手法で加工されたナチュラルな革の色をタン(Tan)と表現する人はそこそこいるだろうが、「オレンジ」と喝破できる人はおそらくもっと少数で、きっと画家かなにかだろう。画家はあいまいな色を、誰もが知っているわかりやすい基本色に仕分けることができるという。もちろん、色名というやっかいなものに振り回されることもなく。

 ライトカーキ。この名に振り回されたが最後、これは軍服に由来するカーキなんだからミリタリーモデルに塗るための色で、実際『太陽の牙ダグラム』に登場する無骨なコンバットアーマーの太ももに塗れと指示がある。「でも光沢だなんてさ。ミリタリーといったらつや消しと相場が決まっているじゃない」と、いつもの退屈な結論にたどりついてしまう。

 絵をなりわいとする友人は、この塗料を一瞥してまず「いいオレンジだね」といい、「たとえば革とか砂、古びた手紙の色。彩度がうんと低くて明るいけどオレンジなんだ」といい添える。

 革、と具体的に示されてはじめて好奇心がさわぎ始める。

 そもそも革ほどそのつやが問題にされるものはない。馬の尻から取ったコードバンという緻密な革が最高級とされるのも、他の革ではまねできない極上の光沢をそなえているからだ。

 光沢の塗料は硬い。つやを消すための粗い体質顔料が混ぜられていないから、レシピが顔料・樹脂・溶媒といたってシンプルで、硬い。つや消しの塗料を光沢に戻すことはできず、つや消しをきわめることしかできないから、最後は紙のような風合いに行き着くしかない。しかし、光沢の塗料はその硬さゆえに、いかようにも肌合いを変えることができるというのは経験で知っている。カープラモのボディーをつやつやに塗り上げようとしてしくじったときの、あの柚子肌だ。マンダリンオレンジで失敗したときは、そういやなんだかうまそうだったな──。

 これを意図してやってみる。混ぜるとその速乾性ゆえにつやが引けがちになるというMr.ラピッドうすめ液で、光沢のままのライトカーキを希釈し、カープラモの革張りシートに遠慮がちに噴きつけてみる。決して濡らさず、ひかえめに、高級な革の表面を覆う繊細なシボを想像しながら。

 果たせるかな、結果は上々だ。フラットベースを混ぜたのでは決してできない、しっとりとした質感。そう、質感だ。もう光沢だとかつや消しだとか、単純にある/ないの次元ではない。「これがアストンマーチンのためだけになめされた革、コノリーです」と説明されたら僕でなくてもきっと鵜呑みにするだろう。
これがライトカーキという色をめぐって、僕が経験したことのすべて。話を聞いてくれてありがとう。

ガイアノーツ ダグラムカラーシリーズ

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bantowblog

1972年生まれ。元トライスタージャパン/オリオンモデルズ、旧ビーバーコーポレーション勤務を経て、今はアメリカンカープラモの深淵にどっぷり。毎週土曜22時から「バントウスペース」をホスト中。