飛行機プラモ早作り/2日で作る銀色の翼

 飛行機模型を超高速で作る秘訣のひとつに「誰かが諦めたプラモのかたきを討つ」という方法があるんだそうで。
 確かにお金を払って新品のプラモを買うと、自分が超真剣に品定めをし、その完成を夢見て大きな妄想がブリブリと膨らんだ状態で家に帰ってくるので、ハコを開ける頃には「うお〜、カンペキに作るぞ!」と鼻息も荒い。そしてその鼻息はその後もフタを開けるたびに復活するので「カンペキに作る時間がない」とか「それだけの技量や道具がない」みたいなことを考え出すとなかなか作れないというわけ。
 しかし、誰かが手放したプラモというのはある意味で夢破れた証拠みたいなもんで、「カタチはどうあれ完成させればオレの勝ち(要出典)」みたいな気持ちになれる……というカラクリを知って、珍しく中古のプラモを手に入れた。お上品な海外製のプラパーツがビニール袋の中でキチキチに並んでいて、これをスパッと作ったらさぞカッコいいだろうなぁという空気を放っていたのだ。

 主翼の上に並んだ美しい波板のディテールにはうっとりしたし、胴体にはただのスジ彫りじゃなくて美しく繊細な凸モールドと慎ましいリベットラインが小気味よい。袋の中にはレジン製のパーツやエッチングパーツがザラザラと入っていて、いわゆる「プラモデル」をイメージしているとたしかに怯んでしまう気持ちはわかる。
 メーカーのAzurはフランス語で「空色」という意味。チェコのスペシャルホビー社がフランス市場向けに展開しているブランドで、あまりに繊細なパーツはプラスチックで再現するよりこうしたマルチマテリアルな手法を採ったほうがコストパフォーマンスや表現力の観点で有利だと彼らは考えている。

 しかし今回はこの小さな飛行機模型をサラリと組み立ててジュエリーのように飾り、「やっぱりカッコいいじゃない!」と眺めることが主題だ。アレも使おう、これも使わなきゃ……とやっていると、前のオーナーが破れた夢と同じ轍を踏むことになってしまう。使いたいパーツだけ使って組み(コクピットの中だけはどうしてもマジメに塗ってしまったんだが、やっぱり最後にはほとんど見えない)、ジュラルミンの色で全体を一気に銀色に染め上げる。

 チェコの会社がフランスの人々に向けて作ったポーランドの飛行機の模型。そこに日本人である私がギリシャ空軍のデカールを貼るという壮大な5カ国共同制作ドラマがここに完結した。とっても小さいけれど、なんだか貴金属をひとつ手に入れたような満足感があって、袋の中に閉じ込められてた前オーナーの残留思念も空に解き放たれたかに見える。勝ち負けよりも「ああ、こうやってただひたすらにカタチと質感を楽しむプラモというのもいいな」としみじみ思ったのだった。

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からぱた

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。