先週末、「ホビーのまち静岡 クリスマスフェスタ2021」というイベントに行った。何があるというわけでもなく、メーカーの中の人に「こんなことやってるのでお越しになったらいかがですか」とオススメされたからだ。まったく知らない新製品が発表されるとか、自分も何かの仕事をそこでしなければいけないとか、そういう必然性がまったくない、とりあえずふらっと静岡に行って、なんとなくイベントに足を運ぶというのは、初めての体験。起きて身支度して、お昼の新幹線に適当に乗る。
静岡に限らず、長距離の移動というのはとても貴重な時間である。駅弁を食うとか、本を読むとか、適度なノイズの中で仮眠を取るとか、居心地の良い椅子の上でじっとして、好きなように過ごす時間というのは移動時ならではのものだと思う。自宅の作業机やカフェとは全く違う、移動している人にのみ許される、ちょっとだけ贅沢な時間。そういうわけで、自分は長距離移動が好きだ。
東京駅から静岡駅までは1時間少々。そこか会場のツインメッセまでは駅からタクシーで1000円ちょいだ。歩くとかなりへこたれる距離だが、タクシーに乗るのは少し気が引けるという場合はバスを使うのもいいだろう。
年に一度の大きなお祭りである「静岡ホビーショー」には日本中どころか世界中の模型ファンが集うので会場はギュウギュウになるが、クリスマスフェスタは地元のお客さんがあくまでもメインのようで、適度な喧騒が会場に満ちていた。模型メーカーが新製品を展示するブースがあり、プラモ作りを体験するコーナーがあり、ハンドクラフトの展示やお蔵出しのセールなんかも開催されている。明確な目的がなくたって、イベント会場にいること自体にワクワクできる。
文字情報や写真では見たことがあっても、実際に人前で展示されるのは初めて……というアイテムも会場にはちらほらあった。開発マンや広報に携わるスタッフもブースには立っているから、たとえば完成見本を見ただけではわからないことを尋ねるのもいいだろう。あと、メーカーの人の前で製品をめちゃくちゃ褒めるとすごく嬉しそうなのでどんどん褒めるといいです。
ときには知らなかったメーカーの初めて見る工具に出会ったりもする。知名度UPのために出店しているメーカーの人たちは自社製品の説明にも人一倍熱心だ。そして、ネットで見ただけでは使い方がよくわからんとか、ショップでは組み立てた状態の大きさがわからんみたいなことがあっても、こういう展示会では実際に使っている様子を見ることができるのも良い。
近年では模型関連のイベントに軍用車両の実物が展示される機会も増えてきた。模型作りの参考に……というよりも、「こんな大きさなのか」とか、「帰ったらすぐ作ろう!」みたいな気持ちが盛り上がる方に効能があると思う。「実物見る」は模型製作のモチベーションを上げる最大の特効薬なので……。
イベントが終わればおでんを食べに駅近くに繰り出そう。大きなイベントでは店も混雑することが多いけど、地元の人たちが集まるようなイベントなら落ち着いて飲食できる。ビッグイベントの喧騒もまた良いのだが、静岡では地場産業であるプラモメーカーが四季折々に中〜小規模のイベントを開催している。東京ではこうはいかないし、メーカーの人と直接会えたり、ピチピチの新製品により早く接することができる場合も多い。
しっかりと気をつけていればちょっとした旅行をするのも「アリ」になってきた昨今だからこそ、もし静岡で模型イベントが開催されることがあったら、その規模の大小に関わらずふと遊びに行ってみよう。わりと楽しいし、帰ってきてやっぱりプラモを作りたい気持ちが膨らむ。
模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。