「実際に軍装を着た人間を3Dスキャンして、それをもとにプラモの原型を作る」というのがここ最近ではタミヤミリタリーミニチュアシリーズのイカした造形の秘密。なかでも1/35スケールの「ドイツ歩兵セット(大戦中期)」は狂おしいほどリアリティのある服の皺や顔の造形もさることながら、パーツを合わせた瞬間にどこが合わせ目なのかわからなくなるほどの強烈な精度にぶったまげました。
そしてこの度発売されたのが1/48スケールの「WWIIドイツ歩兵セット」。前者が5体入りだったのに対し、新アイテムは同じポーズのアニキが5体に、1/35ケッテンクラート中期型の付属フィギュアと同じポーズ(歩行姿勢)のアニキが2体、新規ポーズのアニキが3体追加され、10体入りの大盤振る舞いとなっております。
同じポーズのアニキは同じ3Dスキャンデータをもとに作られているので同じプラモがそのままデカチビ光線銃で小さくなってるんでしょはい解散、みたいなことを言いそうになりますが、ちゃんと比べてみたくなったのでそうします。標本となるのはそのまま単体でも情景になってしまう瓦礫に片足を乗せたアニキ!
パーツを切り出してみると、左の1/35スケールのアニキと右の1/48スケールのアニキではパーツ数がまったく違うことに気づきます。前後に割られていた胴体は一体になり、左右で分かれていた脚は胴体と一体になり……。
まったく同じポーズの人間のプラモがふたつのスケールで登場する、というのは超レアケースなわけですが、それぞれの寸法で表現できることととあえて表現しないこと、小さい方はパーツが細かくなりすぎるのを避けるために一体化することなど、「カタチは同じに見えるかもしれないけど、まったく同じプラモにはならないんだぜ」というのが手にとるようにわかります。
そして残る同じポーズの4人でも、これは同じように比較して楽しむことができます。いちどフィギュアを組み立ててそっと机の上に置くと、その傍らに置くメカの大きさが気になり始めます。あなたにフィットするのはどちらのスケールか。同じに見えて違う二人が、タミヤMMの世界の新たなるメートル原器となってあなたを誘ってくれるはずです。
模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。