ワイスピ観た!/自己肯定のおまじないを手に、アメリカンマッスルカーのプラモを全速力で塗る話。

 ようやく劇場で『F9: The Fast Saga(邦題:ワイルド・スピード/ジェットブレイク)』を観たんすよ。これまではセリフでのみ語られてきた主人公ドミニクの父がなぜ命を落としたのか。そしてその禍根が現在にどんな影を落としているのかというのがついに映像で描かれることになり、全体的に言えばとんでもなくハチャメチャな映画の骨格を支えていたことにわりと感動してしまった。最終的に肉を焼きながらコロナをグビグビ飲んでいるところを観ると泣いてしまうパブロフの犬だしワイスピファンはみんなそうだと思っています。そうだよね?

 ……いや、もはやクルマでバトルすることの意味も、教科書で習う物理学も通用しないマッスルで脳天気なアクション映画と成り果てたワイスピシリーズなんだけど、それでもガレージに静かに佇むドムのダッヂ・チャージャー(’70年式)はものすごい存在感で、「ああこりゃいま作らないとダメなやつだ」ってなっちゃったね。モデラーは単純ですよ。

 さて、トップに掲げた写真のボディがまだらに白黒なのは、ボディパーツの表面がなんだかうねっていてイヤだったので、珍しくサーフェイサー(黒い下地塗料)を吹いて、仕事の合間に板ヤスリやスポンジヤスリでちょこちょことカタチを整えていたから。ベテランモデラーならば「捨てサフ」と呼ぶ作業に近いことを自分がやっていることに驚きましたわ。ただパーツに塗料を塗るだけじゃなくて、少しでもドムの気持ちになりてえ!というアツい気持ちが思わず作業に現れてしまったようだな……。

 で、ひっさびさに本屋さんをプラプラする時間が出来たのでいろんな棚を覗いてたら、自分のタイムラインを騒がせていたデアゴスティーニの『アメリカンカー コレクション』が目に止まったのね。690円で1/43のミニカーが手に入ってしまうんだから恐れ入りますよ。「値段なり」なんて言葉があるけど、どう考えてもひとりの人間がえっちらおっちら作ったら数時間……いや数日はかかるクオリティですわな(こういう分冊百科はたくさん売ることと長く続けることでちゃんと利益が出るように価格設計がされている、というのが理屈でわかっていても、やっぱり驚くべきことですよ)。

 「今日のところはこれくらいにしといてやる」なんて捨て台詞がありますけど、カーモデルはビッカビカにクリーンな雰囲気で仕上げようとするとかなり骨が折れます。そこで、とりあえずこの690円の佇まいよろしいGT500をターゲットにしよう、というのが今回のチャージャーを作る上での目標にすることに。いや、「安価な完成品を買ってきて横に置いて、自分のプラモの完成度のリファレンスにする」っていうのを前からやってみたかったんですよね。両方アメリカンだし、マッスルカーだし、大きさは違えど「並べて恥ずかしくないくらいの出来」っていうのが脳内にあるのと眼の前に物体として示されてるのは全然違うと思うんですよ。

▲ワイスピ、毎度サントラが最高だけど今作はこのProdigyとRZAの曲がヤバすぎる!必聴です

 サントラ爆音で聴きながら魂の缶スプレーをイッパツ。”垂れ寸”のツヤはクリアーを吹くのとは違う質感で、すっげえいいんですよ。ノズルを目一杯押し込んで「ひえー、おっかねー!」と思うところまでボディに近づけながら、ミストが通過するスピードをコントロールして塗料が垂れる寸前まで吹ききります。缶スプレーのアクセル全開ゼロヨンレースはさながらFAST & FURIOUS。白いプラスチックででなんだかよくわからなかったボディのアウトラインがグロッシーなブラックをまとって、ヌメヌメとハイライトを見せてくれるこの瞬間。やっぱツヤのある模型はおもろいね!

 乾燥させながらGT500のミニカーと見比べます。まあまあ、これくらいツヤが出てたら上出来じゃない?なんていう気持ちは、なんも比べるものがないとなかなか怖くて出てきませんが、「みんなが持ってるミニカーと比べて遜色ないじゃん」って思えるのは、こうして横に置けるからだな……と思った次第。

 そりゃ完成品で売られているものにもいろんなクオリティがありますけど、「とりあえず買ってみよう」と思える価格のものがあったらひとつ手に入れてみるのはどうでしょう。「オレ、わりとやるじゃん」と感じられる魔法のおまじないとして、わりと有用っぽいですよ。そんじゃまた!

<a href="/author/kalapattar/">からぱた</a>
からぱた

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。