『艦スペ』でフネのプラモの歴史を知る/ウォーターラインの来し方に己の人生を重ねる豊かさ。

 「静岡の模型メーカー4社(1992年にフジミが離脱したことにより、現在はアオシマ/タミヤ/ハセガワの3社)で統一スケールのプラモを製品化し、世界各国のいろんなフネをずらりとコレクションできるようにしよう!」というのが1/700 ウォーターラインシリーズの理念。それぞれのメーカーがどんな艦船をチョイスし、どんなふうにプラモデルにするのかはもちろん、1971年のシリーズスタートから50年の歳月のあいだにプラモが歩んできた進歩の歴史もそこに刻み込まれています。

 『艦船模型スペシャル』最新号では、そんな1/700ウォーターラインシリーズの歴史を総覧するすばらしい特集が組まれています。

 まずは作例よりも何よりも、11ページにも及ぶ衣島尚一氏の解説にぜひとも目を通してください。模型業界に起きた重大な事件に端を発したウォーターラインシリーズ誕生の経緯に始まり、その急ピッチな拡大と開発の停滞、ユーザーや販売店の受け止めかた(ユーザーの真摯な指摘や要望とメーカーのレスポンスも最高!)、そしてグリーンマックス(現ピットロード)の進撃を絡め、シリーズがいかに市民権を得て花開いていくかを知ることができます。

 もちろん、『艦隊これくしょん』『蒼き鋼のアルペジオ』といった作品、ファインモールドやヤマシタホビーといったメーカーのアイテムたちが本シリーズの開発と消費のしかたに対して絶大な影響を及ぼしたことにも言及しています。この原稿は本当に素晴らしいまとまりかたで、50周年を振り返るのにふさわしいテキストだと思います。

 もちろん、作例も充実しています。あれもこれもとカタログ的にならず、大量にラインナップされたウォーターラインシリーズのなかからエポックと言えるアイテムを選び、古いキットは古いキットとして、新しいキットは新しいキットとして、その姿を実直に見つめ、味わう。新旧をストレートに比較する記事も取り揃えられており、こうした「キットをまっすぐに見つめ直してみよう」という方向性が、なんだかすごく親しみやすいのです。

 戦うフネばかりではなく、ジオラマにできるような建造物や補助艦艇も含め、いろいろな役割のモデルが取り揃えられているのもウォーターラインシリーズの魅力。後半部の連載記事とも連動した氷川丸の紹介などは、事情が許せばぜひとも真似してみたくなる「模型トラベル」へと誘ってくれます。

 どの作例も「うまく作る」というよりも、シリーズが育っていくのを慈しみながら、キットが持つ味をピシッと引き出して読者にプレゼンテーションする視点を忘れていないように思えます。だからこそ、(繰り返しになりますが)艦船模型にあまり詳しくない人にもキャッチできる真っ直ぐでゆったりとしたボールになっています。

 帝国海軍の艦船はもちろん、世界各国の艦船や海上自衛隊の艦船など、ジャンルや時代をしっかりと抑えた記事構成は流石のひとこと。とにもかくにも、パラパラめくるだけでも目に楽しく、読み込めば読み込むほど「実在の艦艇」と「ウォーターラインシリーズ」の幅広さと奥深さに感銘を受けるはずです。

 1/700の艦船模型というと、どうしても緻密でとっつきにくいイメージを持つ人も少なくありません(私もそのひとりでした)。が、誰かの作った模型はいったん忘れて、名前やカタチから選んだウォーターラインのハコをぱかっと開けてみてください。本書はその水先案内人として、これ以上ない優しさで「こういうシリーズがあることの豊かさを、あなたも楽しんでくださいな!」と呼び込んでくれますよ!

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からぱた

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。