

これは「模型屋の模型」である。「なんだよ、ドリフトで峠を攻める豆腐屋じゃないか……」と思ったかもしれない。しかし、これは誰がなんと言おうが、「模型屋の模型」なのである。

店内は暗くて何も見えず、シャッターはほとんど閉まっているが、ショーウィンドウには普通にウマいプラモの完成品が展示されている。数年前まではシャッターがもう少し開いていてたくさんのユニークな(しかも異常にこだわったラインナップの)模型が見られたのだが、いまは一部しか見ることができない。
そしてこの店(のようなもの)は、いまだかつて営業をしたことがない。完成したときから現在まで、ただそこに、模型屋のような顔をして、そっと建っているだけなのだ。


模型店のような佇まいで、決して模型を売らず、そこにただ存在し、ショーウィンドーには誰が作ったのかもわからない模型が飾られている……。模型店のワクワクだけがそこにあり、道行く人を惑わせ、不思議な気持ちにさせる。

人の気配は皆無だが、今日も日没と同時に看板の電気がひとりでに点灯し、ショーウィンドーがライトアップされる。店のドアがお客のために開かれたことはいまだ一度もなく、そしてこれからもないのだろう。