
工具は日々進化し、その性能を高めています。そんなビッグウェーブがノコギリにもやってきました。ノコギリメーカーのゼットソーが、模型製作に使える超薄刃の精密ノコを作り上げたのです。ただ切れるだけではありません。切ったあとにも「おおっ」となる、かなりの業物ですよ。

「ZETSAW クロノコ0.08-F」と名付けられたこの製品。その名に入った数字の通り、刃の厚さはわずか0.08mmです。しかもメーカー公表の切り幅も0.08mm。切るときに削り取られる部分が、それだけ細いということです。この薄さに加えて、いろいろな強みを備えた強力なノコギリなのです。

まずカットしてみましょう。プラ相手に刃が入りやすく、スッと切り込めます。私の場合、刃が入ったら力をかけすぎず、押すときだけ少し力を添え、引くときは表面をなでるように動かしました。とにかく刃がブレないよう、まっすぐ押し引きすることに集中します。もっとも、プラのパイプぐらいなら、そこまで考える暇もなくスッとカットできてしまいます。どうですか、このキレイな断面。

柄には天然木のウォールナットを使用。滑り止めの刻みも入っていて、とにかく上質です。握ったときの手触りのよさ、すべらない感じはさすがの仕上がり。指が落ち着くグリップ感も抜群で、刃先だけでなく、手に触れるところまで気持ちのいい道具です。

中身が詰まったパーツでも、切断は問題なし。肉を切らせて骨も断つ。外装の内側に軸や補強が入った、近年のみっちり詰まったキャラクターキットのパーツも、サクサクとカットできました。

さらに大きなものもカットしてみましょう。最初の一手がズレないように、ナイフであらかじめ浅い切り込みをつけておくと、刃を入れる目印になります。スジ彫りなどに使う厚手のガイドテープを貼り、その縁に沿って切り始めるのも有効です。

四方向から攻めて、外装だけスパッと切断。プラの質にもよりますが、かなりの速さで切れました。これは私の感想になりますが、切れ味といっても、そこまで「ズバー!」という感触がないんです。それなのに、気づけばスッとプラを1枚刻んでいる。この感覚はなんとも不思議。

そして、切り離した部分を元の位置にそっと戻してみると、ほとんど形が変わらず、ぴったり合う。これも不思議な感覚です。ノコギリで切れば、切り幅のぶんだけプラが削り取られます。その幅がとても小さいので、切る前の形を保ちやすいわけです。切ったところが、もともとあったパーツ同士の合わせ目と変わらないように見える。あまりに性能が良すぎる。

もうひとつ驚いたのが、これだけ薄いのに、今回のカットでは刃がへたる様子を感じなかったこと。薄くて切れ味のよいノコギリには、どうしても繊細なイメージがあったのですが、これは頼もしい。さらに、メーカーによれば刃先には「衝撃焼入れ(ハード・インパルス)」を施し、刃先の耐久性も高めているとのこと。長く使ったときに、この切れ味がどれだけ続くのかも楽しみです。


また、この薄さを利用して、切断だけでなくディテールづくりにも使えます。パーツ同士の境目をくっきりさせたいところや、溝を作りたいところに、薄くスッとノコを入れます。

もともとはひとつながりのパーツなのですが、ツメの根元に溝を彫ることで、別パーツが組み合わさっているように見えるようになりました。短いラインには、先端にもちょっとだけある刃を使って刻んでいます。プラスチックをかき出しながら彫れるので、溝の縁に余分な盛り上がりができにくいのも、ノコならではのうれしいところです。

さすがにお値段はなかなかですが、パッケージにはオーナー専用サイトにアクセスするためのIDとパスワードも封入されています。替刃もここで買えるとのことで、使い続けるためのサポートが用意されているのもうれしいところ。
切れ味、耐久性への期待、手に馴染むグリップ。これだけでも相当気になるのに、刃を替えながら付き合っていける。持つ喜びも、使う喜びもある道具です。もちろん、手にしたら眺めているだけでは済みません。なんでもないところまでカットしたくなる、素晴らしいノコギリ。次はどこを切ろうか。ぜひ振るってください。