
艦船模型に興味はある。慣れ親しんだタミヤ1/35ミリタリーミニチュアシリーズの戦車のようにウォーターライン(WL)シリーズも楽しみたい。しかし模型店の艦船模型の棚の前に立つとフリーズしてしまう。ラインナップは膨大なうえ同じシリーズでもメーカーは多岐、番号もバラバラで、どれがエントリーキットとして作るべきなのか分かりにくく感じていました。
手軽に楽しめて出来もよく、ついでにシリーズの歴史も感じられる、そんな都合のいいキットはないでしょうか──展示会でそんなワガママをこぼしていたら、ベテランモデラーが教えてくれたのがこのキットでした。

これは1976年発売の巡洋戦艦フッドに2005年に新規に設計したE級駆逐艦をセットした製品です。最新キットは出来は良いんでしょうが細密化が進みすぎてしんどそう、と尻込みしていたのでちょうどいいセットでした。

まずは50年前の技術で作られたフッドから組んでいきます。
この時期はWLシリーズは日本艦から海外艦へ版図を広げ、またMMシリーズでは「九七式中戦車 チハ」が出た勢いのある時期でもあります。戦艦大和とほぼ同じ長さの船体はスライド金型による一体成型であり、手が切れそうなほどにエッジが立つそのシャープさは半世紀前のものとは思えないほどです。

大型艦とはいえ貼り合わせる箇所は最小限であり、艦橋も積み上げ式のため直ぐに形になります。組み上げてみるとスマートな船体に砲塔のリベットや艦首の鎖が密度のアクセントとして美しく映え目に嬉しいですね。

続いて20年前の技術であるE級駆逐艦を作ります。2005年といえば1/48 MMシリーズが誕生し、艦船模型のさらなる細密化が始まった変革期です。フッドとの最大の違いは船体が左右分割になっていることですが、内部にがっちりとした補強用の桁が仕込めるため、歪みを恐れずにビシバシ接着できます。


加えて部品のダボの嵌め合わせが適度なテンションに調整され、位置決めが簡単になったのが仮組みにも塗装後の組み立てにも嬉しいポイントです。

組み上げるとデジタル設計によるディテールは全体の解像度のアベレージを底上げしつつ、フッドでは省略されていた水密扉やハシゴがクッキリとモールドされ、ボールペン1本分の長さの艦体に凝縮された精密感を感じます。

変わらない精密感・組みやすさへの配慮と時代とともに向上した技術。こうして一箱を組み終えただけで30年間のWLシリーズの旅を終えたような達成感に包まれます。そこで興味が湧くのは今、2026年の最新のWLはどうなっているのだろうか……ということです。この技術の延長線上にあるのか、それとも全く違った景色を見せてくれるのか。
さっそく次のキットを探しに行きましょう。WLシリーズ半世紀のパースペクティブを見つけるために。