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硬いロボットと柔らかい布。/海洋堂のイングラムは「リアクティブアーマー装備の美味しさ」を最大限引き出すプラモデルだ!

 リボルバーカノンのグリップに一体化した三本の指!これぞ「ポーズ固定のプラモデル」が見せてくれる彫刻のマジックだぜ〜ということで海洋堂のARTPLA イングラム リアクティブアーマー 1号機のパーツですよ。どうですか周囲のシワシワとカチッと硬質な銃の造形。このコントラストにこそ「同じ硬さのプラスチックを変幻自在に操るモケイ」の面白さが凝縮されているというものじゃありませんか。

 説明書は史上最高級にギツギツのレイアウトで「なんだか組み立てるの大変そう!」という感じが漂いますが、大丈夫。ゆるっと立って軽く左に視線を投げかけるイングラムの非対称なポーズを硬軟交えた質感のパーツで組み上げていくプラモデルですから、指示されたパーツを所定の位置にポンと置いて流し込みタイプの接着剤を合わせ目にスッと染み込ませれば、待ち時間ほぼゼロでカタチがどんどんできあがっていきます。

 胴体だって「硬い構造物の上に布をかぶせ、要所はベルトで引き絞って固定し、それに引っ張られてシワができる」というのが目で見てわかります。内部構造を徹底再現しなくても、外観からそのカタチの成り立ちが伝わってくる……というのはジャン・ロレンツォ・ベルニーニやアントニオ・コッラディーニの作品にも通じる「彫刻主義」のモケイだと言えるじゃないですか。動かないからこそ、動きが見える。布じゃなくても、布に見える。カタチのダイナミズムが見る者そして組む者を昂揚させてくれます。

 本アイテムの原型師、吉良かずや氏が”フィギュアとしての緊張感”を演出するためにあえて選んだという「トリガーにかかっていない人差し指」とか、別パーツになっているシリンダー、そして何度でも言いたい「中に硬いメカが入ってんな〜!」という前腕の造形などなど、片腕を組んだだけでも見どころたっぷり……。こんな有機的なラインもズバピタで合うのが3Dスキャン〜リマスター〜デジタル設計による金型製作という開発工程の賜物と言えましょう。

 組めば組むほど「どこが合わせ目なのかわからーん!」と驚き、肉厚なパーツが多層構造になっていることで重量感に慄くプラモデル。海洋堂のイングラム、どう考えても「美味しい彫刻の集合体」としてオトクすぎる物体だと思いますのでぜひともみなさんも買って組みましょう。接着していくだけでも絶対に楽しいんだから。

からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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