オシャレ土産物店に潜むプラモを調査したら「自壊する工具」という概念にぶち当たった話。

 東京駅の改札内にて様々な乗客の手土産需要を担う新天地、グランスタ東京。そこに店舗を構える「TOKYO!!!(トーキョーみっつ)」という小洒落たお店で見たこともないプラモを発見!

▲「強化プラスチック」の甘美な響き。

 「プラモじゃなくて工具じゃん!」とお思いのあなた。これ、工具がランナーにくっついているという、とても倒錯的なアイテムなのです!

▲ほら

 ちなみにこの工具を使って組み立てるような商品は店内にありませんし、もちろんプラモも売られていません。で、店員さんに「なぜ仕入れたんですか?」と尋ねてみたところ、その答えは「かわいかったから……?」とちょっぴり疑問形!

 「ランナーに付いているとかわいい」。これ、テストに出ます。

▲「電気を通さないピンセット」「傷をつけにくいスクレーパー」も入ってます

 ところで、この商品を製造しているのはエヌティー株式会社。あのキチキチ鳴るカッターナイフでおなじみのメーカーです。このアイテムが「強化プラを使った工具」に意味があるのか、「ランナーに工具を収めてみよう」という洒落っ気なのか、メールにてエヌティー株式会社の開発研究室の方にインタビューを敢行しました。

Q.この商品はどんな発想がきっかけで「工具をランナーに収めた形の製品」になったのでしょうか?

 始まりは、世の中にはネジ頭が潰れて回すことができなくなって困っておられる方が多いということに気付いたことでした。潰れたネジは元に戻すことは難しいのですが、潰れる前にネジ山に負荷がかかり過ぎないよう、過負荷時に自ら自壊するという「丈夫すぎない工具」を目指しました。ある意味潰れるための工具ですから、低価格である必要もありました。

Q.お土産としての販売に驚いたのですが、こういった販路は実は珍しくなかったりするのでしょうか?

 弊社はカッターナイフとその関連品を長年文具・工具系のルートで扱っていただいておりましたが、最近は、ステーショナリー、ギフト関係など業界を超えた店舗に置いていただくことも多くなっております。その関係もあるのかもしれませんが、多くの人の目に触れる店舗での取り扱いはとても嬉しいことです。

 自壊することでネジを潰さないというコンセプトを実現するために「丈夫過ぎない工具」を目指した結果、樹脂という素材を選択し、製造/流通コストに目配せしてランナーに収める。プラモのような見た目がどこかキッチュだからと文具・工具の流通から派生してお土産店に置かれるという遠い旅路……いいね。

 皆さんの出先でも意外な角度からプラモ状のものが見つかるかもしれません。そして、その成り立ちはキット面白い。お後がよろしいようで。

テキスト/gunco 写真/からぱた