
プラモのレビューという物が凝縮されている1冊。「よく動く、設定どおりの色分け、シャープなモールド」。そういう言葉では飾られていない模型レビューという物はこんなにも面白く、すごく自分の目を鍛えるためのトレーニングともなる記事が目白押しでした。
テーマは80年代キャラクターアニメの代表作のひとつ『聖戦士ダンバイン』のプラモです。私は1983年生まれで、ダンバインが放送しているときに生まれたみたいです。僕のような30代後半の人間にとってはやはり『スーパーロボット大戦』で刷り込まれた人が多く、当時僕の周りでもお気に入りのユニットとして使用している友人が多く、それきっかけでレンタルビデオショップでビデオを借りてアニメ作品を楽しんだもんです。
ちょっと脱線しましたが、本特集の構成・文を担当している廣田恵介氏の取り組みは、何かを懐かしむ行為ではなく「当時の物をしっかりと見てみよう」「その背景について関係者に会いに行ってみよう」という完全にミステリーハンターと同じな“今の視点も入れて物事を見てみよう”という物だと感じました。当時の世代の人ではない僕を、こんなにもあの時のダンバインのプラモって面白いのか!と気づかせてくれました。

本書は当時熱くなっていた僕よりも上の世代の方たちをターゲットにしている本だとばかり思っていました(キャッチからしてすごいので)。実際のターゲットはそこなのでしょうが、本書を読むと、自分がまだ小学生の時に月刊ホビージャパンを読んでちょっと背伸びした気分になったのと同じ感覚を覚えました。大人の人が楽しんでるもの、楽しんできたものをちらっと見たときってやはりドキドキしてさらに興味を抱くもんです。

プラモは当たり前のように新しいものと古いものが共存してお店で売られています。ダンバインのプラモも再販がかかったりするとドーンとお店に陳列されて、それをまた楽しそうに多くの人が買っていきます。そんな時本書のような本があると、プラモと本によるコミュニケーションが加速するのではないかと思います。この本読んだ?とSNSで話題にしたり、今ならリモートで本読みながらみんなであーだこーだ言う。そんなツールとしてまた本が輝ける。そんな可能性をもった特集『聖戦士ダンバイン1983』。ホビージャパンヴィンテージVOL.3で体感してください。
※中面の一部掲載は許可を取って掲載しております。
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■ホビージャパン ホビージャパンヴィンテージVOL.3 本体価格2400円(税別)