
北海道まで行って、プラモデルの展示会に参加する……と書くと、ずいぶん酔狂なことをしているように聞こえる。東京にだってプラモデルは山ほど売っているし、インターネットを開けば世界中の完成品が見られる。新製品の情報を知りたいだけなら、飛行機に乗るよりスマートフォンを開けばいい。
北海道大学の構内にあるセイコーマートは僕のお気に入りの場所だ。巨大な木々に囲まれたガラス張りの店が、夕暮れのなかで美しく光っている。地元の人にとってセイコーマートは珍しいものでもなんでもないのだろうが、地元の人にはなんでもないコンビニも、旅先ではやけに美しく見える。知らない街に来ると、看板や道路やコンビニの棚までいちいち気になる。

模型を作るのと、旅をするのは少し似ている。飛行機を作れば、それまで気にも留めなかった小さな曲線をまじまじと見るようになる。自動車を作れば街を走っているクルマのタイヤやフェンダーが目に入るし、戦車を作れば博物館で鋼板の厚みや溶接跡に見惚れ、ブルドーザーの土汚れやサビにいちいち納得する。
nippperのブースに来た少年が、アクリルマーカーを握ってランナーについたままのパーツを一心不乱に塗っている。この景色を「ものづくりの原点」などと大げさに言い換える必要はないと思う。灰色だった部品に黄色を塗った。本人がやっているのは、ただそれだけだ。でも、その「ただそれだけ」がどこまでも楽しそうなのを羨ましく眺める。もっと上手く、もっと正確に、もっと美しく……みたいなこととはまた別の衝動。「ここをこの色にしたい」というものすごく単純な欲望は、黄色いペンを一本持つだけで味わえるのだ。

たくさんの人とコミュニケーションを取って、懇親会に参加するために街へ出ると、今度は1/1スケールのワクワクが待っている。LIBERTY WALK SAPPORO 北海道/札幌ストアの店内に置かれたGT-Rは、歩行者の目を釘付けにする。幅は広いし、車高は低いし、巨大なウイングが生えている。模型なら手のひらに載るような造形が、人間よりはるかに大きなサイズで目の前を占領していて、その横ではアオシマのプラモデルだって売られている。ああ、模型店じゃないところにもプラモデルの世界の入り口があって嬉しいな、と思う。

北海道モデラーズエキシビション、HME2026の会場に並んだものすごい数の模型。展示会なのだから主役はプラモデルの完成品であるはずなのだが、会場の2階から全体を眺めると、人と人を模型がつないでいるように見える。作品の前で立ち止まる人、作者を探して話しかける人、知り合いを別の卓へ連れていく人。飛行機も戦車もロボットもクルマも怪獣も、全部テーブルの上に置けるから、「自分はこれが好きだ」というものをそのまま持ってきて、知らない人に見せられる。

HMEという模型展示会に参加するというのはただシンプルにその目的を達成するだけじゃなく、バディであるフミテシと北海道大学のセイコーマートでビールを飲み、初めてプラモデルに色を塗る小さな手を見て、巨大でギラギラしたGT-Rを見て、最後には何百もの模型と、わざわざそれを見に来た人たちの熱に圧倒されるという行為のすべてを指している。もし「プラモデル・ツーリズム」という言葉があるなら、僕はこんな旅のことをそう呼びたい。プラモデルをひとつ理由にして知らない街へ行き、その途中にあるものがすべて輝いているのを見つめ、普段なら会わない人と話す。家に帰って机の上のプラモデルを見れば、出発する前より少しだけ違って見えるはずだ。
HME2026で作品を見せてくれたみなさん、話してくれたみなさん、遊んでくれたみなさん、ありがとうございました。今年もプラモデルを見るために北海道へ行って、プラモデル以外のものをたくさん見て帰ってきました。そういう旅なら、何度でもしたいと思っています。またの機会にお会いしましょう!