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【レビュー】プラモデルの本質はどこにある?/「ランナーがないポケプラ」の話。

 思ったより動揺している。プラモデルのパーツが最初からランナー(あのパーツを囲っているワク)から切り離されてるんだもん。ユーザーは袋からパーツを出して、パチパチと組み合わせてヒトカゲの形にするだけ。「おお、それは楽ちんでいいですね!」という人もいるだろうし、「果たしてそれはプラモデルでしょうか」と思う人もいるだろう。そんで私は後者だった、ということに改めて気付かされた……というお話。

 バンダイスピリッツが先日発売した『ポケプラクイック!! Lite』シリーズは、すでに発売されている『ポケプラクイック!!』シリーズと中身は全く同じ。違うのはランナーからパーツが切り離されているかどうか。パーツだけを箱詰めするとこんなに小さくなるんだなプラモデルって……。

 Liteのほうは工場であらかじめパーツを切って袋に詰めてあるので「パーツを取り外す工程をなくしたランナーレス仕様」という謳い文句。前例を上げるなら『ゾイドワイルド』だってパーツを人力で切り出した組み立てキットが箱詰めされていたし、別にこのLiteが新しいことにトライしているわけではない(ゾイドワイルドはパーツを探し当て、組み立てる工程を「復元」と読み替えるパッケージングに妙があったのだけど……)。

 そもそも『ポケプラクイック!!』(写真上)はニッパーを使わずに指のチカラでプチッとパーツが切り離せるタッチゲートという仕様で、おそらく『Lite』は普通に生産したプラモデルから人力でパーツを取り外し、パーツをひとまとめに袋詰めする工程が挟まっている。定価が税込みで143円上乗せされているのは(もろもろのコスト上昇もあるかもしれないけど)その工賃なんだろうな。何か工具を使ってキレイに外しているのかな……と思ったら、案外ゲートの跡がガッツリ飛び出ているところもあってちょっとビビる。

 パーツは少なくそれぞれの色や形状も特徴的なので、番号がなくてもどれがどれだか直感的にわかる。これがガンダムとか戦車だったらだいぶ無理があるので、『ポケプラクイック!!』じゃないと成立しないアイテムだ。で、『Lite』を組み上げればまったく同じヒトカゲが手に入るし、『ポケプラクイック!!』でも自分でパーツを全部切り出せば同じ状態を目撃することにはなる。なるけども。カレーライスが出てくるのと、カレーとライスが別の皿で出てくるのを「口に入れれば同じですよね」というのは違うじゃないですか。いや、カレーとライスが別の器で出てくるのはちょっといい店か。うーん、贅沢ってなんだ。みたいな混乱がある。

 説明書は『ポケプラクイック!!』同様箱の裏に印刷されている。たった14パーツでヒトカゲという完成形もみんなの脳にインストールされているから、これを見なくてもパズル感覚で組み立てられる。そしたらこれはもうプラモじゃなくてパズルなのでは。そもそも箱の内側に説明書が印刷されていることに気づかない人もいるかもしれないし。そうだ、対象年齢は『ポケプラクイック!!』も『Lite』も同じ6歳以上に設定されていて、これはどっちが難しいとか簡単とか、安全とか危険みたいな区別はない、ということの証明かもね。

 プラモデルというのは古今東西現実空想のモチーフをモデル化(=抽象化)して分割してプラスチックパーツに変換した製品であり、これをユーザーが組み立てる遊び。合わせ目を消すとか色を塗るとかは遊び方のバリエーションであって、プラモデルを遊ぶ要素として必須ではないんだけど、プラモデルを組み立てたことのあるユーザーは「パーツを切り離して接合して形を作る」という手順そのものをプラモデルとして認識しているはず。逆に言えば、プラモデルという商品形態を知らなければ『Lite』の仕様も違和感なく受け入れられるだろう。

 この仕様の意味は理解できるし、もたらす体験の良さも想像できる。もっと言うなら、これがプラモかそうじゃないか、なんてのはほとんどの人にとって取るに足らないこと。それでも私は、ランナーというものが表現する「無駄や余白と徹底的に突き詰められた機能が共存するさま」が好きだ。見るとか組むとか塗るとか汚すとか、「プラモデルが好きです」にもいろいろあると思うけど、オレはランナーを愛してる。そう、この『ポケプラクイック!!Lite』は、あなたがプラモデルの何を/どこを愛しているのかを言葉にするきっかけなのだ。

からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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