夏は暴走するレイバーの季節!『劇パト』OPで刺さった喉の骨を抜くMODEROIDのHAL-X10!

▲「HAL-X10を自分の手で組み立てる日」が来るの、すごくないっすか!?

 世の中には「このネタのキットが存在しているだけでありがたい」というプラモデルがありまして、今回取り上げるこの1/60 HAL-X10なんかは、その最たる物であります。

 『機動警察パトレイバー』シリーズに登場した、印象深い脇役レイバーであるHAL-X10。これを発売したのは、グッドスマイルカンパニーのプラモデルシリーズ、MODEROIDです。おれは「MODEROIDは、オタク4~5人に酒を飲ませて『このネタのプラモがあったらいいよなあ!』という駄話をさせた結果をそのまま製品の企画にしている」と思っているんですが(してないよ!)、しかしまあ本当にHAL-X10のプラモデルをマジで作るとは……。しかも1/60スケール、およそ全長240㎜。デカくない……? 「ヘルダイバーとX10のプラモを並べられたら劇パト冒頭の再現ができるよな~」みたいな会話をしたことがあるパトレイバーのオタクはおれの推定では5万人ほどいるはずなんですが、その人たちは責任をとって買うべきだと思います。

▲台座の部品も含めて全部で19枚。多いんだランナーが

 いまチラッと書いた「劇パトの冒頭」なんですが、これは「1989年に公開された『機動警察パトレイバー the Movie』の最初の方」という意味です。この映画の冒頭は、自衛隊で風洞実験されていたX10が暴走し、第一空挺団などがレイバーを用いて対応、重火器も発砲しつつ暴れ回るX10に大量の弾薬を撃ち込みまくって沈黙させ、コクピットを開けてみたら無人だった……というシーンから始まります。で、その冒頭シーンがムチャクチャかっこよかったんですね。

▲あのコクピットも1パーツでできてます

 劇パトの冒頭は「ロボットが空挺降下して戦う映像」のベンチマークです(断言)。輸送機からまず誘導傘が飛び出し、それに続いて格納庫から仰向けに引きずり出されるヘルダイバー。着陸時にはダイブブレーキを展開しつつ、地に足がつく前に一瞬だけ減速用ロケットブースターを噴射するというヘルダイバー着地シーンの芸の細かさ。さらにX10のホバー移動という「そうはならんやろ」な要素が「なっとるやろがい」になっちゃう動きとスピード感の説得力。自衛隊のヘリから飛び出すロケットや、ホバーユニットを破壊されたX10が地面をずり落ちながら発射する曳光弾の軌跡。川井憲次御大の劇伴とアクションが見事に噛み合い、タイトルが出る頃には「ッカ~~! これこれ! これよ!」という気持ちが何回見ても湧いてきます。

▲ホバーユニットはガーンと大きなパーツになっております

 というわけで、本当に数分の冒頭シーンながらそれがめちゃくちゃかっこよく、またX10はそこで大暴れしたからプラモデルになったというわけなんですね。さらに劇場版公開後に放送されたテレビシリーズの第5話「暴走レイバーX10」でもゲスト悪役メカとして登場しておりまして、パトレイバーに登場した脇役メカの中でもかなり知名度のある方なはず。しかしまあ、それをプラモデルにしていろんなところでガッツリ売ってるのは、やっぱりかなり酔狂だとは思いますけども……。

▲なんか駆逐戦車の車体みたいな胴体パーツもバコンとデカい

 で、キットの中身を出してみると、まずランナーが多い! とにかくデカいプラモデルなんで、そのぶん部品点数が増えてこういうことになったんだと思います。しかし1パーツごとのサイズは大きめ。脚やらホバーユニットやらはガーンと大きく成形されており、ランナーは多いけど組み立てはそんなにめんどくさくなさそうだね……という雰囲気が漂っております。

▲機体後端のホバーユニットとの接続部分。こういうメカっぽい部分もドカンと一体成形
▲パトレイバープラモで毎回どういう解釈なのか楽しみな関節シーリング部分。今回は関節パーツとして割り切った設計です

 メカっぽいディテールのためのパーツもバーンと大きめにまとまっており、細かいパイプやらなんやらを取り付けたりする必要がないのもありがたいポイント。あのコクピットも1パーツでドカンと形になっているので、胴体にはめ込んだらそれで終了です。プラモデルになったこと自体は歓迎すべきことではあるんですけど、正直おれは「X10の組み立て」でしんどい思いは別にしたくないんですよね。そんな気持ちにピッタリ寄り添ったパーツ分割と言えるでしょう。

▲目玉は塗装済み。ありがて~!
▲この丸モールドの違いは初めて知った

 しかしまあプラモデルの部品をまじまじと見て感じたのは、「X10の細部ってこうなってたのね……」という驚きです。なんせ劇中では暗闇の中で暴れてるレイバーだったし、テレビ版でもそんなに詳細な作画で描かれていたわけではないので、エビやカニみたいな色と形(テレビ版ではオリーブドラブみたいな色でしたけども)だったのは覚えていたものの、細かいところまではよくわかんなかったんですよね。それがプラモデルになったことで、なんかもう「そこまでわかんなくていいよ!」みたいなところまでわかる。例えば、いきなりくっついてるヘルダイバーっぽい頭のヘルメットのところに打ち込まれた、あの当時の出渕さんのデザインっぽい丸モールド。あのモールドが一個だけ形が違うのとか、おれは全然知らなかった……。

▲君たち……同じスケールなんですよね!?

 というわけで、まず箱をバーッと開けた印象としては、上記のような感じでございます。部品の大きさの雰囲気とか各部の割り切りなんかは割と「いつものMODEROID」という感じですが、しかしそういう作りだからこそこんなレイバーをこんなサイズで製品化できたんだよなあと納得。じゃあ実際組んでみるとどうなんでしょう、というのは今度やってみるので、そっちはそっちでまたよろしくお願いします!

しげる

ライター。岐阜県出身。元模型誌編集部勤務で現在フリー。月刊「ホビージャパン」にて「しげるのアメトイブームの話聞かせてよ!」、「ホビージャパンエクストラ」にて「しげるの代々木二丁目シネマ」連載中。プラモデル、ミリタリー、オモチャ、映画、アメコミ、鉄砲がたくさん出てくる小説などを愛好しています。