コスプレイヤー向けに開発されたガイアノーツの新スプレー/「柔らかサーフェイサー」としての実力を探る!

 こちらはガイアノーツから新発売された「ガイアノーツ ドットコス ガイアスプレー」。nippperにも「試してみてちょ」とサンプルを頂きました。模型用のスプレーかな?と思ったら、どうも特殊用途らしい。

 よくよく説明を読むと「コスプレなどの特殊造形に使われる各種発泡材(ライオンボード・コスプレボードなど)に直接塗装でき、下地として使用できる/ラバーの塗膜形成がされるので造形物が美しく仕上がり、そのまま塗装としても使える/目止めボンドなどを省くことができ、乾燥も早いので作業の時短につながる/ガイアスプレーはコスプレ造形のみならず、多用途の素材に塗装することが可能」と書いてあります。

 「そもそもライオンボードって何?」と知人のコスプレイヤーに聞いたところ、ウレタンとかポリオフィレンといった柔らかめの素材で高密度に成型された発泡ボードの通称(商品名はいろいろある)とのこと。見た目は光沢のないスタイロフォームみたいな感じなんですが、触ってみるとコシのある柔軟性を持っています。すげえ硬い低反発枕みたいな感触だな。

 これを使うと甲冑をはじめ、布で再現できない造形を自作するときに切断しやすく接着しやすく曲面も作れる。さらに人にぶつかったりしても怪我しないという素材なんだね。知らなかった。

 ということで、まずは白と黒のライオンボードの端切れをもらってきて発色テスト。

 ▲まずはシルバーを吹いてみた。
▲黒も吹いたぞ。
▲そして最後は赤です。

 発色までは3回ほど重ね塗りをしましたが、シルバー、黒はきっちり発色させれば隠蔽力はかなり高いしキレイ!赤は白の上から吹けばバシッと赤くなりますが、黒の上からだとかなり沈んだ色に見えます(このへんは普通の缶スプレー塗料と同じだね)。

 特筆すべきは、発泡材にいきなり色が乗って、表面が上品なつや消しのラバーコーティングされた感触になること。従来必要とされていた目止めの工程がなくなるので作業がスピーディーに進むよ、という話らしい。モデラーで言うとサーフェイサー(目止めと下地作り)の役割があって、さらに色が選べるということですね。ちなみにこちらのスプレーはゴム系の塗膜なので、柔軟性があるかわりにちょっと厚みがあり、マスキングしたラインも硬化後だと塗膜が引っ張られてヨレヨレになるから注意。

▲曲げてみます。全然塗膜が割れない!
▲うりゃー!こまかなヒビすら入りません。こりゃすごい。

 さて、このスプレーの説明には「上からふつうのガイアカラーが塗れる」と書いてあります。柔らかい素材にガイアカラー塗ったらバキバキになるやん?と思ったんですが、このガイアスプレーがうまいこと下地になると言うんだから不思議です。

▲シルバーの上にクリアーイエローを吹いてみた。
▲乾燥後にものすごい力で曲げたり引っ張ったりしたけど、塗膜は割れません!

 なんでこうなるのかは全然わからないのですが、とりあえず割れないということは確認。これならガイアカラーが使い放題になるわけで、いきなり自分がライオンボードを切った貼ったして等身大バーチャロンになったり等身大ダグラムになったりしても、ガイアカラーがそのまま使えるやんけ……。

▲突然のシャアザク柔らかスカートです。

 ガイアスプレーが乗らない塗料一覧を見ていると、ポリエチレン(ポリキャップの素材)やポリプロピレン、ナイロンやPETは無理だということ……。しかし、リニューアルされたシャアザクのスカートが軟質素材なんですけどもこれは塗れるんですかどうなんですか?

▲タグに書いてある素材表記。台北?TPEってなに?

 TPEというのをググったところ、これはサーモプラスチックエラストマーという素材らしい。一か八か、ガイアスプレーで塗ってみましょう。

▲ヤー!
▲えーい!

 シルバーの塗膜はかなり厚ぼったくなるのでモールドが埋まり気味になってしまいましたが、バチバチに食いついてひび割れることもありません。すごいぞガイアスプレー。そしてこの上にガイアカラーではなくGSIクレオスのガンダムカラー(ラッカー系)を塗ったらどうなるのか?

▲ばっちり発色させたらエッジが丸みを帯び、トイライクな見た目になり申した。

 とりあえず、こすったり叩いたりしてもラッカー塗料は落ちません。量産型になったぞ!という遊びはとりあえずできることを確認。問題は曲げに追従するかどうかだな!

▲ヤー!メキメキメキ!(こまかいヒビが入りました)
▲慌てて戻したらヒビ見えなくなった……。

 これをどう判定すればいいのか微妙なところなんですが、とりあえず曲げるとピシピシピシと小さな音がしてラッカーの塗膜は割れます。割れますが、もとに戻すとほとんどヒビが見えなくなります。こんなにぐいぐい曲げなければ実用の範囲内という印象で、「塗膜がけっこう厚い」という弱点を除けばエラストマーにもイケるという結果が得られました。

▲オフィシャルの塗装対応表はこちらになります。参考までに。

 普通にプラスチック(ポリスチレン)を扱っていると軟質素材の塗装というのはあまり遭遇しませんが、こういう特殊塗料があることを知っておくと「あ、ここに使えるかも」というシチュエーションに遭遇するのがこの世の常。あとは質感表現としてのラバーコーティングを積極的にしたいときにも使える可能性が大(PSに直接吹くと溶ける場合があるので、吹く前のテストが推奨されています)。

▲粗目の発泡材に使う場合はこのゴム系ベースコートを吹いてからガイアスプレーを使ってね!

 ガイアノーツがコスプレイヤー向けに開発したゴム系のサーフェイサー。使用感はかなり独特ですが、モデラーにもアイディア次第で使える局面は比較的多そうな感触を得ました。そして何より、学芸会や運動会などで造形パゥワを発揮することがある保護者のみなさまや、コスプレイヤーの友人がいるそこのあなた。ぜひともこのマテリアルのことを覚えておいてください。ではでは。

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。